生物間の関係
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生物間の関係は、河川環境と生物の関係で区分された5つの区間について、区間ごとに食物連鎖の関係を整理しました。
区間Aa(水棲生物)の生物間の関係
区間Aaの生物間の関係は、生産者として、今回の調査対象となっていないケイ藻類・ラン藻類、デトリタス(水底にたまった細かい生物遺体の破片)が存在し、 その次に生産者を食物とする一次消費者としてイトミミズなどの小型底生動物が存在します。
その次に一次消費者を主な食物とする二次消費者として大型底生動物であるテナガエビ、また雑食性魚類のキンブナなどの淡水魚類があげられます。
そして一次消費者・二次消費者を取り巻くようにして、三次消費者が存在し、例をあげると魚類は雑食性大型魚類としてコイ・ボラ、肉食性魚類としてスズキ・ウナギ・ニゴイ、魚食性魚類としてハスがあげられます。
鳥類は水棲生物を食物とする三次消費者として存在し、雑食性小型鳥類としてイソシギ・ハクセキレイ、雑食性大型鳥類としてユリカモメ・セグロカモメ、魚食性鳥類としてカワウ・ダイサギ・アオサギがあげられます。この三次消費者の中でも魚食性のカワウ・ダイサギ・アオサギそして魚食性魚類のハスの生息は、これらの消費者の生息を支えるだけの二次消費者(雑食性小型魚類)が必要であることを示し(カワウの場合1羽あたり200~500gの魚類が必要)、区間Aaに魚類が豊富に生息していることを指標しています。
区間Ab(水棲生物)の生物間の関係
区間Abの生物間の関係は、生産者として、区間Aaと同じく今回の調査対象となっていないケイ藻類・ラン藻類、デトリタス(水底にたまった細かい生物遺体の破片)、その次に生産者を食物とする一次消費者としてゴカイ類などの小型底生動物が存在します。
その次に一次消費者を主な食物とする二次消費者として大型底生動物であるテナガエビ・クロベンケイガニなどが生息し、雑食性魚類のマハゼ・アベハゼも二次消費者としてあげられます。
また、一次消費者・二次消費者を取り巻くようにして、三次消費者が存在し、例をあげると魚類は、雑食性大型魚類としてボラ、肉食性魚類としてスズキなどの汽水魚があげられます。鳥類は、水棲生物を食物とする三次消費者が存在し、雑食性大型鳥類としてユリカモメ、魚食性鳥類としてカワウ・アオサギが生息しています。この三次消費者の中でも魚食性のカワウ・アオサギは、これらの消費者の生息を支えるだけの二次消費者(雑食性小型魚類)が必要であることを示し(カワウの場合1羽あたり200~500gの魚類が必要)、区間Abに魚類が豊富に生息していることを指標しています。
区間Ba(陸棲生物)の生物間の関係
区間Baの生物間の関係は、生産者としてイネ科・キク科等の植物が生育しています。
その次に生産者を食物や生息基盤とする一次消費者としてショウジョウバエ・ユスリカなどの小型昆虫類、セセリチョウ・テントウムシ科などの中型昆虫類が存在します。
二次消費者としては、一次消費者を主な食物とするトンボ類などの肉食昆虫、ハエトリグモ科などの肉食性小型クモ類が生息します。
三次消費者としては、生産者である植物と一次・二次消費者を餌とする、ドバト・シジュウカラなどの雑食性小型鳥類(陸鳥)、雑食性鳥類(カモ類)が生息し、アマガエル・カナヘビなどの両生類・爬虫類が生息します。
そして、区間Baの最上位種として存在するのは、四次消費者の大型雑食性鳥類であるハシブトガラス・ハシボソガラス、小型肉食哺乳類であるイタチです。
区間Baの特徴は、都市環境の中でも植物が比較的残されている環境にあり、生産者から四次消費者まで比較的複雑な食物連鎖の系が存在しています。しかし、四次消費者の種が貧困で、イタチ・ハシブトガラス・ハシボソガラスに集中しています。また、区間Baでの四次消費者より上位の五次消費者にあたるオオタカなどの猛禽類や、タヌキ・キツネなどの中型哺乳類は存在しない状態となっています。
区間Bb(陸棲生物)の生物間の関係
区間Bbでは、生産者としてイネ科・キク科等の主に荒れ地に生育する植物とツツジなどの植裁植物が存在します。
その次に、生産者を食物や生息基盤とする一次消費者としてユスリカなどの小型昆虫類・ヤマトシジミ・ヒメカメノコテントウなどの中型昆虫類が存在します。小型昆虫類・中型昆虫類は、生産者である植物が貧相であるため区間Bbでは少なくなっています。
その次に一次消費者を主な食物とする二次消費者としては肉食昆虫として、ウスバキトンボがあげられます。
三次消費者としては、生産者である植物と一次・二次消費者を餌とする、ヒヨドリ・ムクドリなどの雑食性小型鳥類(陸鳥)・カルガモなどの雑食性鳥類が存在します。
そして、区間Bbの最上位種として存在するのは、四次消費者の大型雑食性鳥類であるハシブトガラスです。
区間Bbの特徴は、都市環境を象徴しており、河川環境は基本的にコンクリート護岸となっています。植物は、護岸の隙間や土壌が堆積したところに存在する程度となっています。したがって、全ての生物の生息基盤となる生産者の植物が貧相であるため、その上位にあたる種も貧相になっています。
区間C(陸棲生物)の生物間の関係
区間Cでは、生産者として木本を中心とした植物、その次に生産者を食物や生息基盤とする一次消費者として小型昆虫類・中型昆虫類が存在します。
小型昆虫類・中型昆虫類は、生産者である植物が木本を中心とする樹林となっているため、キジラミ・ハムシやセミ類・カメムシ科・コガネムシ科等の樹林を主な生息域とする昆虫が生息しています。
その次に一次消費者を主な食物とする二次消費者としてゴミムシ類やコガタスズメバチの肉食昆虫・ハエトリグモ科等の肉食性小型クモ類が生息しています。三次消費者としては、生産者である植物と一次・二次消費者を餌とする、メジロ・シメなどの雑食性小型鳥類(陸鳥)・雑食性鳥類(カモ類)が存在し、カナヘビなどの両生類・爬虫類およびアズマモグラなどの雑食性小型哺乳類が存在生息します。
そして、区間Cの最上位種の四次消費者として存在するのは、大型雑食性鳥類であるハシブトガラスです。
区間Cの特徴は、都市環境でも植物が比較的存在し、複雑な食物連鎖の系をもつ区間Baと同様な構造となっていますが、代表的な種に、樹林を主な生息域とする種(キジラミ科・ハムシ科・セミ類・コガネムシ科・ゴミムシ類・コガタスズメバチ・ジョロウグモ等)が含まれているのが特徴です。