河川環境と生物の関係
- 更新日
河川環境と生物の関係は、"生物の生息はそれぞれの生息環境を指標する"という視点に立ち、調査結果を調査地区と確認された種ごとに整理し、生物の生息状況から見た環境の区分を行いました。
水棲生物からみた環境の区分
水棲生物からみた環境の区分では、表と図に示すとおり川の塩分濃度の関係から淡水魚・淡水性底生動物が優占するする区間Aa、汽水魚・汽水性底生動物が優占する区間Abの2つの区間に分類されました。
表にそれぞれの区間の特徴と代表的な水棲生物を示し、図に区間の範囲を示しました。
区間Aaは、ギンブナ・ウグイなどの淡水魚、エラミミズ・カワコザラガイなどの淡水性底生動物が優占する区間となり、区間Abはボラ・マハゼなどの汽水魚、フジツボ類、イガイ類、ゴカイ類等の汽水性底生動物が優占する区間となりました。
表 水棲生物から見た環境区分
区間の 特徴 |
区間Aa
|
区間Ab
|
||
塩分濃度が比較的低く淡水の魚類・底生動物が優占する上中流域 | 塩分濃度が高く汽水の魚類・底生動物が優占する下流域 | |||
分類対象 となった 河川 |
新河岸川、隅田川上・中流 綾瀬川、中川上流 |
隅田川中・下流、神田川河口部、北十間川 旧中川 |
||
代表的な 魚類 |
淡水魚
|
汽水魚
|
汽水魚
|
|
コイ、ギンブナ、 モツゴ、ウグイ ドジョウ、ハス ニゴイ |
ボラ、マハゼ、 スズキ |
ボラ、マハゼ、スズキ、アベハゼ | ||
代表的な 底生動物 |
淡水性
|
淡水・汽水性
|
淡水・汽水性
|
汽水性
|
エラミミズ ナミウズムシ カワコザラガイ |
シロイトミミズ テナガエビ クロベンケイガニ サカマキガイ |
テナガエビ マシジミ(淡水) シマイシビル(淡水) シロイトミミズ アメリカザリガニ クロベンケイガニ ヤマトシジミ |
ヨーロッパフジツボ アメリカフジツボ ゴカイ アシナガゴカイ イトゴカイ カニヤドリカンザシゴカイ ムラサキイガイ コウロエンカワヒバリガイ ホトトギスガイ イガイダマシ チチュウカイミドリガニ ヤマトスピオ |
区間Aaの代表的な風景
区間Bbの代表的な風景
陸棲生物からみた環境の区分
陸棲生物からみた環境の区分では、表と図に示すとおり植物・陸上昆虫類・鳥類の確認状況から区間Ba・区間Bb・区間Cの3つの区間に分類されました。
表にそれぞれの区間の特徴と代表的な陸棲生物を示し、図に区間の範囲を示しました。
区間Baは、高水敷上に草地が存在し、昆虫類は草原性の昆虫が生息し、鳥類については、樹林を生息域とする鳥類が生息する区間となりました。
区間Bbは都市化した区域で、植物は貧相で植裁植物が目立ち、昆虫類の生息は少なく、鳥類はハシブトガラスなどの都市に生息する鳥類が目立つ区間となりました。
区間Cは、神田川の水道橋付近に樹林が存在し、昆虫類、鳥類ともに樹林性の生物が確認される区間に分類されました。
表 水棲生物から見た環境区分
区間の特徴
|
区間Ba
|
区間Bb
|
区間C
|
植物 | 高水敷上に草地が存在し、コンクリートの隙間や土壌が堆積した場所に水生植物が生育する区域。 | 調査対象河川の中でも都市化が進んだ区域。ツツジ類やトウネズミモチ等の植裁植物が生育しており、草本は、イネ科やキク科等の荒れ地に生える植物が多い。 | 神田川の水道橋付近に樹林が保全されている区域。神田川での植物・陸上昆虫類調査はこの1点のみである。 |
陸上昆虫類 | シジミチョウ科やセセリチョウ科、テントウムシ科等の草原に生息する種が主となっている。 | 植生が貧相であるため昆虫類の寄与率は低い。区間Ba同様に草原に生息する種が主となっている。 | 樹林が存在するため、ジョロウグモ・アブラゼミ・オサムシ科等の樹林性の昆虫が確認されている。 |
鳥類 | 区間Ba周辺の環境は都市や住宅地となっているが、比較的林が存在する区域である。ドバトやハクセキレイ・ヒヨドリ等の都市に生息する鳥類からキジバトやシジュウカラ・ムクドリ等林に生息する鳥類が確認されている。また、水鳥もカワウ・アオサギをはじめカモ類が確認されている。 | 区間Bb周辺の環境は、都市化が進んでおり、ハシブトガラス・ドバト・ハクセキレイが主となっている。水鳥は、カワウ・アオサギ・ユリカモメなど河口等に生息する鳥類が確認されている。 | 樹林が存在するため、ウグイス・メジロ・シメ等の樹林性の鳥類が確認されている。 |
対象とした河川 | 新河岸川 隅田川上・中流 旧中川 |
隅田川下流 北十間川 綾瀬川 新川 中川上流 |
神田川水道橋付近 |
区間Aaの代表的な風景
区間Bbの代表的な風景
区間Cの代表的な風景
記事ID:017-001-20240820-006222