調査結果の概要
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1.はじめに
東京都では、「河川水辺の国勢調査」を、平成7年度より実施してきました。「河川水辺の国勢調査」は、河川の適切な整備と管理のため、 河川環境に関する基礎的な情報を収集する目的で行われています。
魚類調査、底生動物調査、植物調査、鳥類調査、両生類・爬虫類・哺乳類調査、陸上昆虫類等調査の6項目の生物調査のほか、植生や瀬・ 淵、河川横断構造物等の分布状況図を作成する河川環境基図作成調査があります。 ここでは、平成7年度から令和4年度までに東京都が行った「河川水辺の国勢調査」の結果をとりまとめました。
2.調査実施状況
調査は、荒川水系(隅田川、新河岸川、神田川など)、利根川水系(綾瀬川、中川、旧江戸川など)、多摩川水系(多摩川上流部、南浅川、 谷地川など)、鶴見川水系(鶴見川、恩田川など)の各河川の、東京都管轄区間を対象に実施しています。
3.確認種数
これまでの河川水辺の国勢調査では、全水系で魚類が106種、底生動物が608種、植物が1590種、鳥類が124種、両生類・爬虫類・哺乳類が55種、陸上昆虫類等が 3291種確認されています。 水系別に見ると、奥多摩の山間部など、自然豊かな地域が調査地に含まれる多摩川水系での確認種数が多い結果となっています。一方、利根川水系の確認種数は比較的少ない結果 となりましたが、ほとんどの河川周辺が市街化されていることがその一因として考えられます。
調査項目 | 全水系 | 荒川水系 | 利根川水系 | 多摩川水系 | 鶴見川水系 |
魚 類 | 106種 | 77種 | 64種 | 76種 | 23種 |
底生動物 | 608種 | 307種 | 141種 | 488種 | 252種 |
植 物 | 1590種 | 1011種 | 827種 | 1051種 | 734種 |
鳥 類 | 124種 | 92種 | 74種 | 97種 | 60種 |
両生・爬虫・哺乳類 | 55種 | 26種 | 10種 | 50種 | 30種 |
陸上昆虫類等 | 3291種 | 934種 | 972種 | 2651種 | 1295種 |
注1)国土交通省の河川環境データベースホームページで公開されている「河川水辺の国勢調査のための生物リスト」(2022年11月7日 更新修正版公開)に掲載されている分類群を基準として計数しています。
注2)種まで同定されていないものは、同一の上位分類群に属する種数が確認されていない場合、1種として計数しています。
注3)陸上昆虫類等には、昆虫類のほかクモ類が含まれています。
4.重要種の確認種数
絶滅のおそれのある野生生物への関心が高まる中、環境省では、平成3年に初めてのレッドデータブックである「日本の絶滅のおそれのある野生生物」を刊行しました。 その後は定期的に見直しが行われ、平成12年~平成18年にかけて、改訂版「改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物」 を刊行、平成18年~平成19年にかけて第3次レッドリストを公表、平成24年~平成25年にかけて最新の第4次レッドリストを公表しています。 平成27年度からは、時期を定めず必要に応じて個別に改訂することとし、現在環境省レッドリスト2020が最新版です。
東京都では、平成10年に東京都版のレッドデータブックである「東京都の保護上重要な野生生物種 1998年版」を刊行し、平成22年 には2010年版のレッドリストを公表、平成25年に「レッドデータブック東京2013」を刊行しており、現在「東京都レッドリスト(本 土部2020年版)が最新版です。
これまでの河川水辺の国勢調査で確認された絶滅のおそれのある野生生物(重要種)は、魚類33種、底生動物56種、植物198種、鳥類 71種、両生類・爬虫類・哺乳類40種、陸上昆虫類等114種でした。魚類及び両生類・爬虫類・哺乳類で、東京都の最新のレッドデータ ブック掲載種の約6~8割が確認されています。
調査項目 | 現地調査での 重要種数 |
東京都レッドデータブック 2020掲載種数 |
現地調査での 重要種の確認割合 |
魚 類 | 33種 | 38種 | 87% |
底生動物 | 56種 | 204種 | 27% |
植 物 | 198種 | 642種 | 31% |
鳥 類 | 71種 | 162種 | 44% |
両生・爬虫・哺乳類 | 40種 | 60種 | 67% |
陸上昆虫類等 | 114種 | 427種 | 27% |
注1)底生動物は水底に生息する生物の総称です。そのため、底生動物のレッドデータブック東京2020掲載種の数は、便宜上、甲殻類及び 貝類の掲載種数のほか、幼虫期を水中で過ごすトンボ目及びヘビトンボ目の昆虫類の掲載種数を当てはめました。
重要種の確認割合
(レッドデータブック東京2020掲載種数との比較)
5.外来種の確認種数
近年、人間の移動や物流が活発になったことで、外国から多くの動植物が、ペットや観賞用などの目的で輸入されています。これらの動植物 が自然界に逃げ出し、野生化したことで、在来の生態系に与える影響が懸念されています。
これまでの河川水辺の国勢調査で確認された外来種は、魚類28種、底生動物20種、植物465種、鳥類10種、両生類・爬虫類・哺乳類 8種、陸上昆虫類81種でした。両生・爬虫・哺乳類と植物で外来種の出現割合が高く、特に植物では約3割が外来種でした。
調査項目 | 在来種の 割合 |
外来種の 割合 |
現地調査での 外来種数 |
魚 類 | 74% | 26% | 28種 |
底生動物 | 95% | 5% | 20種 |
植 物 | 71% | 29% | 465種 |
鳥 類 | 92% | 8% | 10種 |
両生・爬虫・哺乳類 | 85% | 15% | 8種 |
陸上昆虫類等 | 98% | 2% | 81種 |
(注)外来種の選定は、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(平成16年法律第78号)に該当する種(2004 年、環境省)、「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト」(平成29年、環境省)に記載 されている種(2015年、環境省)、「我が国に定着している外来生物のリスト(暫定版)」(2006年、環境省)の掲載種の他、栽培品 種や家禽種等を外来種として抽出しました。
外来種の出現割合
(現地調査での全確認種数との比較)