技術支援に必要な調査・開発の事例
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当センターは、今まで培ってきた技術と知見を活用して、建設局内外における現場で発生する様々な課題に対する技術支援の業務を実施しています。課題を解決するに当たっては、必要な場合には、その課題に対応した調査・開発の業務も担っています。
事例1.中温化技術を活用した舗装材料の導入
アスファルト混合物の製造温度を下げても、通常製造品と同等の性能を発現することができる中温化技術に着目し、CO2排出量削減に寄与する低炭素(中温化)アスファルト混合物の導入検討を進めてきました。
加熱温度を最大30℃低減しても、道路舗装に必要な強度などを確保するための検証を重ね、全国で初めて事前審査認定混合物として承認されました。低炭素(中温化)アスファルト混合物を全ての都発注工事で活用した場合、年間で最大約3,470(トン-CO2)削減可能です。加えて、製造業者などの業務省力化や製造時の加熱温度の低減により、工期短縮が見込めます。
今後、全国におけるアスファルト混合物を使用する工事での活用が期待されます。
参考文献
- 関根 淳(2019):中温化混合物の適用性に関する調査報告、令元.東京都土木技術支援・人材育成センター年報、pp.47-56
- 橋本 喜正(2021):機械式フォームド方式を用いた中温化アスファルト混合物の試験施工による技術検証、令3.東京都土木技術支援・人材育成センター年報、pp.15-20
- 上野 真誉(2023):中温化再生アスファルト混合物(機械式フォームド方式)による試験施工結果と技術検証、令5.東京都土木技術支援・人材育成センター年報、pp.19-23
事例2.視覚障がい者誘導用ブロックのすべりに関する検証
調査・開発の背景
- 視覚障がい者誘導用ブロック(以下、誘導用ブロック)は主に歩道に設置されており、すべりにくさという事象に対し、通常の歩道舗装と同程度の歩行性や安全性が求められる。
- 一般的に舗装のすべり抵抗を測定するために使用している振り子式スキッドレジスタンステスタは、その方法等が「舗装調査・試験法便覧」に規定されているが、測定する際に、舗装と接触するラバースライダーの幅が誘導用ブロックの突起同士間の幅より広く、測定ができない。
- 誘導用ブロックのすべり抵抗を測定・評価する方法や製品の規格値等が確立されていない。
検証結果
- 誘導用ブロックのすべり抵抗を評価する方法を確立
- 誘導用ブロックのすべり抵抗の規格値案を設定
- 現場での点検用の簡易なすべり抵抗測定装置を考案
事例3.液状化予測の自動判定システムの開発
センターでは、地盤データを活用した地盤解析や情報提供等を目的として、昭和61(1986)年から都各局の地盤調査委託成果や区市の民間建築工事に係る地質調査で得た地盤・地質情報を収集し、「東京都地盤情報システム」で一元管理しています。昭和62年3月、この地盤情報を活用して「東京低地の液状化予測図」を発刊し、その後、平成8年に多摩地域の予測図、平成9年に港湾局作成の港湾地域の予測図と合本するなど対象地域の拡大や予測図の更新を行ってきました。
また、個人での調査が難しい液状化発生リスクの目安を示し、都民の防災意識を啓発することを目的として、平成18年から「東京の液状化予測図」をセンターホームページで公開しています。
令和3年度、今後も多くの提供が見込まれる膨大なボーリングデータと地形に関する地図情報などから液状化リスクを自動判定するプログラムを開発し、専門技術者の判断と労力を要さない液状化予測図の更新を実現しました。
[従前の判定:ボーリングデータによる液状化計算結果を基に、その土地の地図情報を参考にしながら、液状化判定区分の領域を専門技術者が人力で描写する方式]
この最新情報に基づく「東京の液状化予測図」は、複数の都内自治体の防災に関するホームページでも引用されるなど、都民の防災意識の啓発に寄与しています。
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液状化予測図の対象地域
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東京の液状化予測図(令和3年度改訂版)
事例4.中小河川のスカム対策に向けた技術開発
石神井川等の感潮域では、しばしばスカムやゴミ等の浮遊物による河川景観の悪化や悪臭の発生が問題となっています。スカムとは河床に堆積した有機性の懸濁物質が水面に浮上したものであり、感潮域に位置する多くの中小河川で確認されています。スカムが問題となっている河川では、さまざまなスカム対策の取り組みが行われていますが、スカムの解消には至っていません。
これまで、スカムの発生メカニズムは多くの調査や検討が行われていますが、特定の区間に多くのスカムが集積するメカニズムについては不明であり、有効な対策を行う上でその解明が求められていました。 また、スカム対策の効果を示す上で、スカムの継続的なモニタリングが望まれますが、水質と異なりセンサーによる連続計測ができないため、スカムの定量的な把握にはカメラ画像等から人が目視でスカムを判定する必要がありました。
本件は、スカム対策を進める上での課題を解消するため、河川水理、気象等の解析により特定区間にスカムが集積するメカニズムを検証し、また、AIを用いた画像認識技術によりスカム発生検知を自動的にできるよう技術開発を行ったものです。
CNN(convolutional neural network):AIを用いた画像認識
参考文献
- 高崎 忠勝(2015):定点カメラを用いた都市河川のスカム自動判別、平27.東京都土木技術支援・人材育成センター年報、pp.201-204
- 高崎 忠勝(2021):中小河川感潮域の水面浮遊物判定CNNの構築、令3.東京都土木技術支援・人材育成センター年報、pp.29-34
事例5.道路橋RC床版の薄層増厚補修工法の検討
道路橋橋面舗装の打換え工事時の過切削等により床版厚が減少している床版や床版上面の砂利化(土砂化)などで損傷が進行して耐荷性能が劣っている床版を対象に、床版上面の被りコンクリートを20㎜程度切削して、防水性能を高めた薄層増厚材を設計床版厚まで回復させる補修や設計床版厚+20mm程度増厚補強する新しい薄層増厚工法の検討を行っています。
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輪荷重走行装置
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試験体設置図