井の頭池だより31 1月

2020年1月24日(金) 水生生物モニタリング結果


井の頭池における水生生物の生息状況を把握するため、4~11月まで張網(定置網)を使ったモニタリングを行っています。張網7基を定位置に一昼夜設置して、中に入った生きものの種類、個体数などを記録しています。今シーズンの結果を解説します。
 
お茶の水池に設置した張網での採取結果の推移を図1に示します。
 
図1-1.水生生物(外来種)の採取結果の推移(縦軸の単位:CPUE(Catch Per Unit Effort):1網あたりの捕獲数)

過去に捕獲されていた外来種のブルーギル、オオクチバス、ゲンゴロウブナ、コイ、ギギは、最近の張網や他の漁具による採取でもまったく捕獲されていません。外来種は生息種数が少なくなり、生息数も全体的に少ない状態に保たれているようです。
 
図1-2.水生生物(在来種)の採取結果の推移(縦軸の単位:CPUE(Catch Per Unit Effort):1網あたりの捕獲数)

在来種の捕獲数は、かいぼり以前よりも大幅に増加していました。
 
ここからはいくつかの在来種に注目し、データ数が多かった遮光型カゴ網(アメリカザリガニ駆除で使っているワナ)による採取結果の推移を解説します。
 
図2-1.ヌカエビの採取結果の推移(縦軸の単位:CPUE(Catch Per Unit Effort):1カゴあたりの捕獲数)

ヌカエビの捕獲数は、かいぼり27以降に増加しています。要因としては、肉食性外来魚がほとんどいなくなり、捕食されずに生き残る個体が増えたことや、水生植物が増加して生息場所や食物が増え生息環境がよくなったことなどが考えられます。しかし外来エビ類が増加しているため、生息場所や食物が競合する可能性があることから、今後も注視していきます。
 
図2-2.クロダハゼの採取結果の推移(縦軸の単位:CPUE(Catch Per Unit Effort):1カゴあたりの捕獲数)

クロダハゼは、かいぼりがあった年に多数の幼魚が確認されていることから、かいぼりが繁殖を促していることも考えられます。かいぼり後、急激に繁殖した以降は徐々に数を減らしながら生息しているものと推測されます。
 
石積み護岸に群れるクロダハゼ(2016年)
図2-3.ウキゴリの採取結果の推移(縦軸の単位:CPUE(Catch Per Unit Effort):1カゴあたりの捕獲数)

ウキゴリは、2016年以前は非常に少ないハゼでしたが、2017年に捕獲数が急増しました。クロダハゼと異なり、かいぼりの翌年に増加しています。肉食性の魚なので、かいぼり直後に増加した生きものを捕食して成長し、翌年に増加するというパターンが考えられます。2019年の春から初夏にかけては、水面に群れをなして泳ぐウキゴリの幼魚が橋からもよく見えました。
 
ウキゴリの大群(2019年)
図2-4.ナマズの採取結果の推移(縦軸の単位:CPUE(Catch Per Unit Effort):1カゴあたりの捕獲数)

ナマズは、捕獲数の著しい増減はありませんが、かいぼりのあった年だけ稚魚が見られています。増水時に水に浸かるような草地で繁殖する魚ですが、水位変動の少ない井の頭池では繁殖しにくいようです。かいぼりを終え、池に水を戻したときの増水を利用して繁殖しているとも考えられます。
 
ナマズの稚魚(2018年)

こうしたモニタリングの成果は、定例ガイドツアー「井の頭池ちょこっとウォッチング」「かいぼり新聞」などを通じて紹介しています。
 

2020年1月14日(火) 水鳥いっぱいの井の頭池


井の頭かいぼり隊は、カモやカイツブリ、サギの仲間、セキレイやカワセミなどの水鳥のモニタリング調査を月2回行い、生息状況を記録しています。この冬は、井の頭池がいつもより多くの水鳥でにぎわっています。蓄積されてきたデータとともにご紹介します。
 
冬鳥の潜水ガモ(ホシハジロ、キンクロハジロ)は、10月頃に飛来して3~4月に繁殖地である北へ向かいます。雑食性で、潜水して植物や底生動物を食べます。
 
図1 潜水ガモの個体数

この冬はホシハジロ、キンクロハジロともに個体数が多く、渡来数のピークとなる12月末には例年の約2倍、計84羽が確認されました。集団で潜水し、水草などをモグモグしている様子が七井橋などから見られます。
 
アオミドロを食べるキンクロハジロ

同じく冬鳥のオオバンは、10月頃に飛来し4月頃にいなくなります。主に植物を食べ、潜水も上手です。
 
図2 オオバンの個体数

この冬は例年の5倍、30羽が確認された日もあり、どっちを向いてもオオバンがいるといった感じです。11月までよく見えていたツツイトモやミクリ類は、葉の先端が食い千切られ、草丈が低くなっています。浅場に上陸して草をついばんでいるのも間近に観察できます。
 
浅場のオオバンたち

水鳥全体の確認種数も増加しています。とくにカモ類は植物食のカモがよく飛来しており、種数では例年の2倍が確認されています。
 
図3 水鳥確認種数

ヨシガモ(9、11月)、トモエガモ、ユリカモメ(11月)がかいぼり隊の調査では初めて確認されたほか、これまであまり見られなかったヒドリガモが毎回観察されています。毎回たくさんの水鳥を数えて記録するので、調査をするかいぼり隊は大忙しです。
 
ヒドリガモ

井の頭池で観察しやすくなったさまざまな水鳥を紹介しているリーフレットが完成しました。橋や園路からカモやオオバンの姿をお楽しみください。
 
リーフレットは、案内所のほか欄干や園路脇のチラシボックスで配布中です!

お問い合わせ

建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0192
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