井の頭池だよりR7 8月

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2025年8月21日(木) 浅場の保全作業、その後


井の頭池には、かいぼりをきっかけに整備・再整備された“浅場”と呼ばれる湿地が5箇所あり、池(水域)と陸地をつなぐ移行帯となっています。浅場に池底の泥を使ったところ泥の中で休眠していた植物の種子(埋土種子)が発芽し、今では40種類以上の水生・湿生植物が確認されるようになりました。浅場ではサジオモダカやジョウロウスゲなどの東京都レッドリスト選定種が多く見られ、生物多様性豊かな場所になっています。
この湿地環境を維持するために、井の頭かいぼり隊が保全作業を行っています。2025年1月から3月にかけては一般参加者と一緒に保全作業イベントを行いました。イベントでは、七井橋近くの葦島と呼ばれている浅場で水深の深い場所に土を入れて、水がヒタヒタの湿地を拡げました。
 
冬の保全作業イベントの様子
 
半年後の今、この場所には今まで数株しかなかったコガマが数十株に増えて、ソーセージのような穂を揺らしています。保全作業によって生育に適した水深になったのかもしれません。
 

コガマ

冬に保全作業を実施した場所は、泥が露出した環境になりました。一見、荒地化したように見えますが、春になるとそういった泥地を好むジョウロウスゲやミコシガヤなどの湿生植物が芽生えてきました。
 
ミコシガヤ(準絶滅危惧、東京都北多摩)
 
夏の浅場の保全作業では、ヒメガマやヨシなどの背の高い植物を刈り取っています。ヒメガマやヨシは水深の深い場所にも生育していますので、浅場に生育する背の高い植物は刈り取り、地表に日光を届かせるようにします。背の低いカワヂシャやコウガイゼキショウの仲間などの湿生植物が生育できるようにしているのです。
 
カワヂシャ(絶滅危惧II類、東京都北多摩)
 
こうした浅場の保全作業によって、多様な水生・湿生植物の生育場所が維持されています。これから秋冬にかけては花が終わり種子散布の時期になります。晩秋にはガマ類の穂が弾けて無数の綿毛が風に舞い、幻想的な風景を楽しめます。
冬のヒメガマ(2021年1月)
 
四季折々、様々な光景をお楽しみください。

 

 
 

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建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0364
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