井の頭池だよりR2 2月

2021年2月24日(水) 2020年度水鳥モニタリング報告


井の頭かいぼり隊は、毎月2回、水鳥の生息状況や利用状況に関する調査を行っています。毎回定められたルートを歩きながら、確認された水鳥の種類、性別、個体数や行動、利用環境などを記録します。
 
水鳥調査の様子

水鳥調査ではカモ類やカイツブリ、サギ類、カワセミやセキレイ類などを記録しています。調査対象のすべての水鳥の種数と個体数の推移をグラフに示します。
 
図1-1 水鳥確認種数の推移
図1-2 水鳥確認個体数の推移

2019年度は、例年よりも水鳥の確認種数・個体数共に多く、井の頭池が水鳥で賑わっていた様子が印象に残っている方も多いと思います。前年度と比べると、2020年度は水鳥が少ないのでは、と感じるかもしれません。グラフを見ると、2019年度が特に種類・個体数が多く、今年度は例年並だったことがわかります。
 
続いて、前年度に特に多かった潜水ガモ(キンクロハジロ、ホシハジロ)の記録です。これらのカモ類は井の頭池に渡来して越冬し、潜水して水生生物などを食べます。開けた水面にいることが多いため、井の頭池で観察しやすい水鳥です。
 
キンクロハジロのオス
ホシハジロのオス
図2 潜水ガモの個体数の推移

潜水ガモは日によって個体数が大きく変動します。2020年度は、キンクロハジロは1月下旬に約40羽が確認されましたが、2月上旬の調査では10羽以下でした。井の頭池で見られるカモ類は、近隣の水辺を移動しながら生活していると思われ、日によって見られる種類と個体数が変動しています。
 
このほか、今冬は井の頭池では珍しいヨシガモが見られたり、以前はあまり観察できなかったバンが数羽で越冬していることにも注目が集まりました。
 
ヨシガモ 9月から10月にかけて滞在していました。
バンは数羽が滞在しています。

そろそろ井の頭池ではカイツブリなどの繁殖が始まる時期です。引き続き、水鳥たちの生息状況等にご注目ください。

 

2021年2月9日(火) 2020年度水生生物モニタリング報告


井の頭池では、魚やエビなどの水生生物の生息状況のモニタリングを行っています。4月から11月の間に毎月1回、各池の決まった場所に決まった大きさの張網(定置網)を一昼夜設置し、中に入った生きものの種類や個体数を記録します。このほか、アメリカザリガニの捕獲作業で得られたデータも、モニタリングに活用しています。
今年度は、前回のかいぼりから3年目に当たります。昨年度までの調査結果を踏まえながら、今年度の水生生物の生息状況を紹介します。
 
張網回収作業の様子

張網で捕れた水生生物の種ごとの捕獲数(1ワナあたりの捕獲数)を図1に示します。
 
図1-1 外来種の種ごとの1ワナあたり捕獲数の推移
図1-2 在来種の種ごとの1ワナあたり捕獲数の推移

3回のかいぼりを経て、外来種の捕獲数は低密度な状態が続いています。中でも、オオクチバスはかいぼり27、ブルーギルはかいぼり29を最後に、確認されなくなっています。一方で、タモロコやアメリカザリガニ、カワリヌマエビ属の一種などは依然として井の頭池で繁殖を続けています。2019・2020年度は、かいぼり29直後の2018年度と比べると増加の兆しがあり、引き続き対策を続けていく必要があります。
在来種は、かいぼり実施以降に増加していることがわかります。モツゴ、ギンブナ、スジエビ、テナガエビなどは、昨年度に続き生息密度が高い状態が維持されています。
 
続いて、特徴的な結果を得られたいくつかの種について、個別に紹介します。
 
図2-1は、2019年度までの遮光型カゴ網によるヌカエビの捕獲データです。
 
図2-1 2019年度までのヌカエビの1ワナあたり捕獲数の推移

かいぼり29以降、捕獲数が急増していることがわかります。
続けて、今年度のデータを加えたグラフを図2-2に示します(縦軸の数字の違いに注意!)。
 
図2-2 2020年度までのヌカエビの1ワナあたり捕獲数の推移

今年度の捕獲数は、2018・2019年度の増加を大幅に上回る結果となりました。2019年度までの1ワナ当たり捕獲数は1未満でしたが、2020年夏以降は1ワナで複数のヌカエビが捕獲されています。ヌカエビは水草の茂った環境を好むエビです。ツツイトモが池全体に群生するようになったことで、ヌカエビが身を隠す場所や食べものの増加につながり、生息環境が改善されたのではないかと考えられます。
 
ヌカエビ

ほかに確認数が増加した種として、オイカワが挙げられます。オイカワはモニタリングで使用している漁具にはめったに入りませんが、近年は初夏に水面近くを数匹の群れで泳いでいる様子が目撃されるようになってきました。2020年5月に橋の上からオイカワの群れを撮影して数えたところ、300匹以上の大群であったことが確認されました。水がきれいで砂礫のある環境を好む魚のため、井の頭池の水質や底質が改善されたことにより生息数が増えてきたのだと考えられます。
 
橋の上から観察できたオイカワの群泳

次のグラフは、遮光型カゴ網によるクロダハゼの1ワナあたり捕獲数の推移を示したものです。
 
図3 クロダハゼの1ワナあたり捕獲数の推移

これまでクロダハゼは、かいぼりの翌年に生息数が増加した後、ゆるやかに数を減らしている傾向がありました。かいぼりから3年目の今シーズンは、2020年7月に弁天池で突発的にたくさん捕れた月のデータを除くと、経年的にゆるやかに減少していることが確認できます。来シーズンはどのように推移していくのか気になるところです。
 
今シーズンは、群生していたツツイトモが7月頃に消失したり、外来水草コカナダモが増加したりといった、大きな環境の変化が見られた年でもありました。このような変化が水生生物にどのような影響を及ぼすのか、来年度も引き続き注視していきたいと思います。
 

お問い合わせ

建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0192
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