井の頭池だよりR7 2月

2025年2月20日(木) 2024年、アメリカザリガニは減ったのか


井の頭池では2017年までの3回のかいぼりで、オオクチバスやブルーギル、コイなどの大型肉食性外来魚を根絶しました。しかし、池干し中は泥に潜ったり他所へ移動してしまうアメリカザリガニは、かいぼりでは対処しきれませんでした。
アメリカザリガニは2023年6月に条件付特定外来生物に指定されました。飼育は今まで同様にできるものの、野外へ放すことや輸入・販売が禁止されています。魚や水生昆虫などの在来水生生物を捕食したり、水中の水草を切断して生きもののすみかを奪ったり水質を悪化させてしまうなど、生態系への影響が大きい外来種です。井の頭かいぼり隊は毎年4月から10月まで、アメリカザリガニなどの外来種防除を行っています。
2024年は、ザリガニBOX、遮光カゴの2種類のワナを井の頭池全体に223個設置し、毎週1回、回収しました。  
ザリガニBOX

エサで誘引するワナ
小さなペットボトル型の浮きが目印

 
遮光カゴ

日陰で休息しようと生きものが入ってくるワナ
黄色い浮きが目印


シーズン中に捕獲したアメリカザリガニは6,226匹。前年の23,520匹よりも大幅に少なくなりました。ただし、年によって設置したワナ数が違うので、捕獲数だけでは増えたか減ったかは分かりません。そこで、CPUE(Catch Per Unit Effort、1ワナ当たりの捕獲量=捕獲数÷総ワナ数)という指標で考えてみます。
 
図.ワナごとの年別CPUE推移

1回目のかいぼり25の後、オオクチバスやブルーギル等の天敵がいなくなり、それらに捕食されなくなったアメリカザリガニの生息密度が高くなりました。これはかいぼり前から予想されていたことだったので、防除活動を本格化しました。
3回目のかいぼり29から2年後、井の頭池に外来水草コカナダモが繁茂するようになりました。アメリカザリガニはコカナダモを隠れ家として利用するほか、食料にもします。また、コカナダモに潜んでいるエビ類や魚などの水生生物を食べます。そのためか2020年から生息密度が高くなりました。一方で、2023年は植物プランクトンの増殖により水中に光が入らなくなり、井の頭池に水草が見られなくなりました。その影響があったのか2024年は生息密度が急減し、とくにお茶の水池はほとんどアメリカザリガニが捕れないような状況でした。沈水性の水草の増減に合わせてアメリカザリガニも増減する、という関係性があるのかもしれません。さらに、年々捕獲効率のよいワナに転換し、ワナ数自体も増やしているため、防除圧の高まりによって、アメリカザリガニの増加を抑制できているとも考えられます。水草と防除圧の相乗効果が、アメリカザリガニの生息密度を左右している可能性があります。今後も数年単位で、コカナダモの増減とアメリカザリガニの増減が繰り返されるのかもしれません。引き続きアメリカザリガニの根絶を目指して、防除作業を続けていきます。
 
水上での防除作業の様子

防除を終えた冬は、次のシーズンに向けてワナの補修を行っています。小さなアメリカザリガニも逃げられないように遮光カゴの網目を縫ったり、ザリガニBOXの劣化した部品を交換したり、気の抜けない細かい作業が続きます。また、ザリガニBOXを手作りするのもこの季節。毎冬20個ほど作り、捕獲効率のよいワナを増強しています。
ワナを補修する隊員たち

[提供:井の頭かいぼり隊]


これからも防除や普及啓発、保全作業に取り組み、在来の生きものであふれる豊かな水辺を目指します。
ガイドツアー「井の頭池ちょこっとウォッチング」や保全作業イベント「チョコッとかいぼり隊」では、取組について解説しています。ぜひご参加ください。

 
 

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建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0364
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