井の頭池だよりR3 9月
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【緊急事態宣言の延長にともない、9月現在、井の頭かいぼり隊は活動を休止しています。】
2021年9月30日(木) 浅場の夏草刈り
浅場とは文字通り、水深の浅い場所です。井の頭池は岸付近でも水深が1.2mほどあり、ガマなどの抽水植物にとっては水深が深くて生育しにくい環境でした。そのため、かいぼりで水のない期間を利用し、池底の土を寄せて段を作り、浅場を整備しました。浅場は水生・湿生植物の生育場所になっています。
夏から秋にかけ、浅場に生育するさまざまな植物が花や実を付けます。今回は、園路から観察しやすい主な植物を紹介します。
井の頭池に生育している3種のガマ類のうち、もっとも穂が小さいのがコガマです。他のガマ類よりも岸に近い、水深がほとんどない場所に生育しています。秋が近づき、穂が大きく育ってきました。
カンエンガヤツリは、浅場の中でもあまり水に浸からない場所に生育します。浅場は一見すると平坦なようですが細かい起伏があり、雨がたくさん降れば水没し、日照りが続くと陸になる部分があります。このような湿地環境にはカンエンガヤツリのように、水深が絶えず変化する不安定な環境に適応した湿生植物が生育しています。
真夏に咲くことから、盆花としてよく供えられるミソハギ。地味な花が多い浅場で、ひときわ目をひく鮮やかさがあります。
コムラサキは庭などの植栽でお馴染みですが、本来は湿地や原野に生育する低木です。初秋に薄紫色の実を付けます。
井の頭池では毎月1回程度、水辺環境の保全作業を行っています。草の生長が旺盛な7~9月に浅場で草取り作業を行いました。
刈り取ったのは主にヨシです。草丈が2mを超える大型植物で他の湿生植物を覆うため、刈り取ってスペースを空けます。そのほか、小鳥や風によって種子が運ばれてきた樹木の実生は、湿地を陸化させたり日陰にしてしまうため抜き取りました。
浅場には、湿地を好む外来植物も生えてきます。アメリカセンダングサやメリケンガヤツリを丹念に見つけ出し、種子散布する前に抜き取りました。
湿生植物には絶滅危惧種に選定されている植物が多くあります。生息環境となる湿地そのものが減少しているほか、遷移が進んでヨシや樹木に覆われてしまったことが原因です。湿生植物は、人の手による草刈りや耕起、あるいは水位変動のような自然による「撹乱」が続くことで湿地環境が保たれ、生育し続けることができます。湿生植物のこうした特性に留意して浅場の環境を保っていきたいと思います。
井の頭池での浅場整備の取組を5分程度で紹介する動画を製作しました。こちらのリンクからご覧ください。
井の頭池ちょこっとウォッチング
[1]浅場と鳥
[2]浅場と鳥(葦島編)
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