井の頭池だよりR5 3月

2023年3月15日(水) 2022年 水生生物モニタリング&アメリカザリガニ防除報告


井の頭かいぼり隊では、井の頭池の自然の状況を把握する目的でさまざまな生きもののモニタリングを行っています。今回は2022年度の水生生物(魚・エビ類)の生息状況について報告します。
 
張網で採れた生物を数えるかいぼり隊員

水生生物のモニタリングには、主に張網を使用しています。春から秋の各月1回、7個の張網を池に一昼夜設置し、捕れた生きものを記録します。
モニタリングを開始した2014年から2022年までの張網による在来種の捕獲数の推移を図1に示しました。3回のかいぼりを経て、捕れた在来種の匹数が増加してきたことがわかります。ここ数年は、年による数の変動はありますが、かいぼり以前よりも生息状況が良い状態に保たれていると考えられます。
 
図1 在来種の張網1個あたりの捕獲数

図1のデータから、近年のギンブナのデータを抽出したものを図2に示します。これまでも生息数は少なくはないと考えられていましたが、2022年は捕獲数がとくに増加していました。張網で捕獲されるギンブナの大部分はその年に生まれた幼魚であることから、今期はギンブナの繁殖状況が良好であったことがわかります。
 
図2 ギンブナの張網1個あたりの捕獲数
ギンブナの幼魚

一方、張網による外来種の捕獲数の推移からは、外来種はかいぼり以前に比べると低密度になっていることがわかります。在来種に大きな被害をおよぼしていたオオクチバスは2回目のかいぼりで、ブルーギルは3回目のかいぼりで根絶を達成しました。これらがいなくなったことによって、在来種の魚やエビの生存率が高くなったものと考えられます。ただし、近年増加の兆しが見られる外来種も確認されています。
 
図3 外来種の張網1個あたりの捕獲数

増加が確認されているのはアメリカザリガニです。本種はもともと、張網ではそれほど多くは捕れていませんでしたが、2022年は捕獲数が目立って増加しました(図の2022年の薄紫色)。
本種は水草や水生昆虫などに被害をおよぼすことから、井の頭池では2014年から防除活動を行っています。たくさんのザリガニを捕獲する目的で、張網よりもよく捕れるワナを使用しています。当初はカゴワナを使用していましたが、近年は捕獲効率の高い装置を導入し、カゴワナとの入れ替えを進めています。
本種のワナあたりの捕獲数は、2016年をピークとして、以降は横ばいになっていました。ところが2022年は明らかな増加が確認されました。増加要因は一概には言えませんが、一つの要因として、外来水草コカナダモが池全体に増加し、水底から水面まで繁茂していることによって、アメリカザリガニの食べものやすみかが増えていることが関係していると思われます。
 
  • 図4 アメリカザリガニのワナ1個あたりの捕獲数 左:カゴワナ、右:コンテナ型捕獲装置

アメリカザリガニを減らすためには、コカナダモに対処していくことはもちろんですが、ワナによる捕獲圧を高めることも重要です。アメリカザリガニがあまり活動しない冬の間は、捕獲作業を休止して、ワナの修理や新しいワナの製作を行っています。地道で細かい作業ですが、かいぼりによって回復した井の頭池の環境を悪化させないように、春からの防除シーズンに備えています。
 
カゴワナを補修するかいぼり隊員 [提供:井の頭かいぼり隊]


 

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建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0192
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