井の頭池だよりR6 11月
2024年11月7日(木) 井の頭池で越冬する水鳥たち
夏頃から、井の頭池にカモの姿が増えてきます。一年中見られるカルガモは、近隣の水辺から繁殖を終え越冬地へ移動する途中の個体が8月頃に井の頭池にやって来て、個体数が増えるのです。そして冬が近づくにつれて、カラフルな羽色のカモなどが池を彩ります。冬に見られるカモ類の多くは、ユーラシア大陸北部、極東ロシアで繁殖し、越冬するために日本へやってきます。
図.井の頭池のカモ類個体数の変遷
(2016年4月〜2024年10月)
2017年までに3回のかいぼりをおこなった井の頭池では、かいぼり後に池底の埋土種子から芽生えたツツイトモなどの沈水性の水草が生育するようになりました。かいぼりから数年後、今度は外来水草のコカナダモ(重点対策外来種)が池底を覆うようになりました。コカナダモは水面や水中に浮遊した切れ藻から増殖できる強い繁殖力を発揮して、在来水草を席巻しました。かいぼり後に復活したイノカシラフラスコモやツツイトモ、ヒロハノエビモなどが再び失われることのないよう、コカナダモ対策を強化したいところです。
しかし、植物食性の水鳥にとってはどんな水草も食物です。2021年度、2022年度は数多くの水鳥が、水草が豊富な井の頭池で越冬しました。
今年も10月頃から越冬するカモ類が見られています。今年はツツイトモが繁茂し水中にナガエミクリが伸長するなど、在来外来問わず沈水性の水草が多いので、2021年度、2022年度のように水鳥でにぎわう冬になるかもしれません。彼らは日々近隣の水辺を行ったり来たりしています。日によって変わりますが、運がよければ10種類ほど見られるカモしれません。
水鳥たちは、日中、食事をしているか休息しています。食事中の彼らを観察していると、水面で採餌するタイプと潜水して採餌するタイプがいます。潜水できないカモが、潜水できるカモやオオバンの近くでおこぼれにあずかろうと待ち構えていることもあります。
キンクロハジロとホシハジロ(2021年1月)
潜水して木の実や水生生物を食べる
ヒドリガモ(2023年2月)
植物食性で、湿地の植物や水中のツツイトモやコカナダモを食べる
オオバン(2024年11月)
カモではなくクイナの仲間
潜水して水中の藻や草をちぎって食べる
ヒドリガモがそれを横取りしようと待っていることも・・・
飛来当初はオスもメスも地味な色合いだったカモたちは、冬本番になるにつれてオスが派手な色に換羽します。構造色と言って、羽毛の色素だけでなく微細構造により光の当たり方で違う色に見えるので、お天気などによって印象が変わります。
マガモ(2021年1月)
オスは青首ともいい、緑光沢のある頭部が印象的
ヨシガモ(2022年3月)
植物食性、オスは頭部の形状からナポレオンとも呼ばれる
頭部の羽は赤紫から緑色に輝く
換羽中のオシドリ(2024年11月)
オシドリは、井の頭池で群れが越冬していた時代もありましたが、近年は移動期に短期間確認されるのみでした。今年は久しぶりに10月初旬から長期間確認されています。当初はメスと同じような地味な色彩でしたが、11月になると換羽が進んできました。美しい銀杏羽が見られるか楽しみです。木陰の暗い場所にいることが多いので、見つけたらラッキーです。
公園案内所や池畔では、井の頭池の自然情報がわかるリーフレットを配布しています。この時期は水鳥リーフレットがオススメ。散策のお供にご利用ください。