井の頭池だよりR6 10月

2024年10月11日(金) ヒメガマとカイツブリ


井の頭池のかいぼりをきっかけに整備した浅場には、池底の泥の中で眠っていた種子から芽生えた希少な湿生植物や、ヒメガマやガマなどの抽水植物が生育しています。
かいぼり以前は抽水植物の茂みがなかったため、カイツブリは水面に垂れ下がった枝などに落ち葉などをくっつけて営巣していました。枝などを基盤とする巣は、風や水位変動により壊れたり漂流してしまうこともある不安定な巣でした。
水面に垂れ下がった枝に作られたカイツブリの巣の写真(2019年9月)
水面に垂れ下がった枝に作ったカイツブリの巣 この後、巣が枝から離れて漂流してしまいました (2019年9月)

カイツブリは本来、抽水植物の茂みや沈水植物の上に浮巣を作ります。かいぼり後にヒメガマなどの抽水植物が生育範囲を拡げたことにより、2018年以降はカイツブリの営巣場所として利用されるようになりました。
ガマの茂みに作られたカイツブリの巣の写真(2023年5月)
ガマの茂みに作られたカイツブリの巣 (2023年5月)

七井橋付近ではかいぼりをきっかけにヒメガマが生えてきて、大きな群落を作るまでになりました。
ヒメガマやガマの茂みは、様々な生きものたちを育みます。稚魚やトンボのヤゴなどの隠れ場所になり、またカモやサギ類などの水鳥の採食・休息場所、時には営巣場所にもなります。しかし、手入れをせずに放置すると、水鳥がエサを探しながら植物の間を歩いたり泳いだりできないほど密生する上に、植物が衰退して枯れた茎葉が倒れて堆積し、徐々に陸化してしまいます。
井の頭かいぼり隊の活動の一環として、夏から冬にかけてヒメガマやガマを適宜刈り取って、若返りを図っています。昨冬には七井橋付近で、枯れた茎葉が密生していたヒメガマを刈り取りました。
ヒメガマを刈り取る様子(2024年2月)
2024年2月の刈り取りの様子 水深の深い場所はフローターに乗って刈り取りました

春になると少しずつヒメガマが伸長して、夏には七井橋からヒメガマの葉に触れるほどになりました。近くのヒメガマの茂みでは、カイツブリが営巣し子育てをしました。
ヒメガマが再生する様子(2024年10月)
2024年10月の様子 ヒメガマが適度な間隔で再生しています

ヒメガマやガマには、夏になるとソーセージのような茶色い穂がつきます。晩秋から年末に穂が熟してモコモコとはじけ、綿毛が風に乗ってふわふわ飛んでいくのが見られます。逆光にきらめきながら綿毛が舞う光景は夢のような美しさです。
狛江橋浅橋のガマの穂の写真(2024年10月)
狛江橋浅場のガマの穂 (2024年10月)
穂がはじけて綿毛が風に舞う様子(2022年12月)
穂がはじけて綿毛が風に舞う (2022年12月)

井の頭かいぼり隊では、四季折々の自然や自然再生の取り組みについてご案内するガイドツアー「井の頭池ちょこっとウォッチング」を月1回開催しています。月替わりのテーマで旬の井の頭池を楽しめますので、ぜひご参加ください。


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建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0364
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