井の頭池だよりR7 11月

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2025年11月27日(木) 2025年カイツブリの子育てシーズンが終了しました


現在の井の頭池は、都内随一のカイツブリ繁殖地です。
1回目のかいぼり(かいぼり25)前は、魚食性のカイツブリの餌となる水生生物が外来魚に捕食されていたため、カイツブリの繁殖が確認できないどころか、井の頭池で姿が見られなくなっていました。かいぼりで大型の肉食性外来魚を根絶した結果、在来魚やエビ類などの生息数が回復しました。1回目のかいぼり翌年に3つがいが繁殖し、その後は繁殖つがいが徐々に増えました(図1)。
図1.カイツブリ繁殖数 

※2003〜2015年は井の頭かんさつ会 田中利秋氏の調査による(出典:よみがえる!井の頭池!かいぼり報告会資料集「かいぼりで変わった水鳥の暮らし」ほか)
※独り立ち数は、ふ化から1ヶ月後に生存していたヒナの数とした。

カイツブリの一般的な繁殖ピークは5月から8月頃ですが、食物量が豊富なことなど繁殖に関わる条件がよければ年間を通じて子育てをします。井の頭池でも11月に産卵したことがありました。2025年は、最初に抱卵を確認したのが3月下旬でした。
その後次々とつがいが巣造りをし、7月下旬に最後の抱卵を確認しました。

ヒナ5羽と連れだって泳ぐカイツブリ
(2025年5月) 

2025年は春から秋までに井の頭池で確認された10つがいのうち8つがいが繁殖し、ふ化したのは44羽、ふ化一ヶ月後に生存して独り立ちしたとみなしたヒナは29羽という調査結果となりました。ふ化数、独り立ち数とも、低調だったここ2年と比べれば1.5倍ほど増加しました。増減の要因としては、食物量や営巣環境、ほかの生きものとの種間関係などが考えられます。

カイツブリは、潜水して魚やエビ類、水生昆虫などを食べる肉食性の水鳥です。井の頭池では、モツゴやギンブナなどの小魚、テナガエビやスジエビなどの甲殻類、トンボの成虫や幼虫などを食べているのをよく見かけます。井の頭かいぼり隊が行っている水生生物モニタリングでは、定置網の一種である張網を4〜11月に月1回設置・回収して、魚やエビ類の個体数を調べています。

図2.外来水生生物の張網によるCPUE
 
図3.在来水生生物の張網によるCPUE
※CPUE(Catch Per Unit Effort/1ワナ当たりの捕獲量)
= 総採捕数 ÷ 総ワナ数


3回のかいぼり後、大型の肉食性外来魚であるオオクチバスやブルーギルがいなくなった井の頭池では、モツゴやギンブナ、スジエビやテナガエビなど在来種の個体数が回復しました。生態系には、捕食や被食といった複雑な種間関係があり、さらに気象条件や水質などの環境要因も年ごとに変化します。したがって、単年の増減に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で生きものの変化を見守ることが重要です。
カイツブリの繁殖ピークに当たる5月、6月のモニタリング結果を見てみると、2022年から減少傾向にあった在来種のCPUEが2025年には増加しました(図3)。沈水植物が豊富で水生生物も豊富だった2020年、2021年と同水準かそれ以上に回復しています。

かいぼり29から8年目の今年は、春から初夏にかけてツツイトモなどの沈水植物が豊富でした。ツツイトモや外来水草コカナダモの茂みは、稚魚やエビ類、トンボのヤゴ(幼虫)の隠れ家です。また、まだ長い時間潜れないカイツブリの幼鳥がツツイトモに潜って小魚やヤゴを食べているなど、魚捕りの練習場所にもなります。沈水植物の繁茂と水生生物の生息数、カイツブリの繁殖は関係があるのかもしれません。引き続き、様々な要素とカイツブリの繁殖との関係を探っていきたいと思います。

ツツイトモの上で抱卵中のカイツブリ
(2025年6月)
 

カイツブリは年末頃からつがいを形成し求愛を始めます。これから、にぎやかな季節が始まります。 

 

 

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