井の頭池だよりR6 5月
2024年5月24日(金) 井の頭池の水草
2024年5月、久しぶりにツツイトモ(東京都レッドリスト(北多摩)絶滅危惧IB類)がよく生長しています。池底から1.3mほど伸びて水面に達しようかという群落もあり、ちぎれたツツイトモがヒメガマの根元や橋桁など、あちこちに引っかかっているのが目につきます。
ヒメガマに絡まったちぎれツツイトモ
これから7月にかけて、ツツイトモが水面まで伸長する時期です。小さなツクシのような花が見られる日が待ち遠しいです。
小さなツクシのようなツツイトモの花 (2019年6月)
かいぼり前、井の頭池は緑色に濁った水に多数のコイが泳ぎ、夏にはアオコが発生し、水草はまったく見られませんでした。2014年の1回目のかいぼり以降、水中に水草が生育するようになりました。
かいぼりでは、採餌行動によって池底から生える水草を切断するとともに泥を巻き上げて水を濁らせるコイを取り除きました。さらに池干しによる水質改善効果もあって、湛水後に池水が透明になりました。また、池干しの乾燥や低温による刺激で池底の泥の中で眠っていた種子や胞子が目覚め、池底まで届くようになった日光のおかげで水草が生長するようになったのです。
ツツイトモもかいぼり後に再生した水草です。2019年には水面を覆うツツイトモ群落が「モネの池」のように美しいとニュースになったことがありました(詳細はこちら:かいぼりニュース21号
[リンクhttps://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kensetsu/000045068.pdf])。今年もモネの池再来となるでしょうか。
在来の水草ではほかに、2016年にイノカシラフラスコモ(東京都レッドリスト(本土部)絶滅危惧I類)が59年ぶりに復活して話題になりました。(詳細はこちら:かいぼりニュース11号
[リンクhttps://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kensetsu/000040416.pdf])シャジクモの仲間で、1957年に井の頭池で初めて発見されたのちに新種として記載されたので、イノカシラの名を冠しています。今年も主に弁天池の上流部で生育が確認されています。
イノカシラフラスコモ (2016年5月)
3回目のかいぼりから数年後、外来水草のコカナダモ(重点対策外来種)が凄まじい繁殖力を発揮して池底を覆うようになりました。コカナダモは池や湖、水路、河川などに定着している外来水草で、水面や水中に浮遊した切れ藻から増殖します。
コカナダモ(2020年6月)
井の頭池では2018年まではわずかに見つかる程度でしたが、2019年に数カ所でまとまった量の生育が見つかりました。2020年には池の広範囲に分布が拡大し、徐々に生育密度が高くなりました。水面から水中まで30cm以上の厚さでちぎれたコカナダモに埋め尽くされた場所では、フローターで移動するのが難しいほどでした。
在来水草のイノカシラフラスコモやツツイトモの生育を脅かすので、2020年から井の頭かいぼり隊と都職員によるコカナダモ駆除作業が始まりました。
曳網によるコカナダモ回収作業 (2022年6月)
2023年は緑色に濁って池の透明度が低かったせいか、コカナダモを含め水中の水草が見られなくなってしまいました。今年はコカナダモが今のところ少し見えています。今後、水草の状態がどう変わっていくのか、引き続き注視していきます。
お問い合わせ
建設局西部公園緑地事務所 工事課 0422-47-0364
記事ID:017-001-20241110-009918