トノサマバッタの相変異の話
多摩動物公園 昆虫園飼育展示係 燗c瑞希
多摩動物公園の昆虫生態園では、トノサマバッタの一生という展示を行っています。これは幼虫から成虫までの各成長段階を実際にご覧いただけるものです。
しかし、このバッタたち、皆さんが野外で見かけるトノサマバッタのイメージとは少し違っているかもしれません。一般的に思い浮かぶトノサマバッタは緑色だと思いますが、昆虫園で展示しているもののほとんどが黒褐色です。
実はトノサマバッタは、同じ種類でも個体密度の違いによって見た目や生態が変化します。その現象を「相変異」と呼びます。
緑色のものは個体密度の低い環境で育った「孤独相」と呼ばれるタイプで、後ろ脚が長く、跳ねるのに適した体をしています。野外で見られるトノサマバッタの大半はこちらのタイプです。
一方、昆虫園で主に飼育・展示しているものは、個体密度が高い環境で育った「群生相」と呼ばれるタイプです。体色が黒っぽくなるほか、孤独相に比べて翅が長く、高い飛翔能力をもっています。多摩動物公園ではトノサマバッタをモグラやニホンザル、ゲンゴロウなどのエサとして利用しており、多くの個体を高密度で飼育しているので、必然的に群生相となります。
昆虫園では孤独相と群生相、どちらも展示しています。ご来園の際には、ぜひ見比べてみてください。