ペンギンはなぜ換羽をする?
井の頭自然文化園 飼育展示係 石田翼
多くの鳥の仲間は1年に1回、古くなった羽毛が新しいものに生え換わります。これは「換羽」と呼ばれ、鳥の仲間が生きていくうえでとても大切な生理現象です。今回は、当園で飼育しているフンボルトペンギンの換羽についてご紹介します。
フンボルトペンギンは、国内の多くの動物園・水族館で飼育されているペンギンです。野生では、ペルーやチリの海岸や沿岸に生息しています。換羽は日本の飼育下では7月上旬から8月下旬にかけて起こり、約2週間かけて新しい羽毛へと生え換わります。ペンギンは羽毛が古くなると防水・保温効果が弱くなることから、換羽はそれらの機能を回復し、維持するための生理現象だと考えられています。換羽中はこれらの効果もなくなり海に入れず、野生ではえさの魚を捕るのも難しくなります。さらに、換羽にはとてもエネルギーを使うため、ペンギンは換羽前に通常の2〜3倍もの量のえさを食べ、体にたっぷりと脂肪を蓄積します。そして換羽が始まると絶食し、巣箱の中でじっと体を動かさずに体力の消耗を抑えながら生活します。
現在、当園では3羽のペンギンを展示しています。今年の換羽は7月14日から8月17日まで観察され、現在、全羽が新しい羽毛へと生え換わりました。当園にお越しの際は、新しい羽毛になって元気に水の中を泳ぎ回るペンギンたちをぜひご覧ください。