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地域の取組紹介

江戸流し雛振興会

江戸流し雛振興会 実行委員長・林 勇さん

母なる川・隅田川で日本の伝統文化と和の心を伝える

川にまつわる伝統行事

日本人なら誰もがその名を耳にしたことがある川、隅田川。この東京の母なる川とも言える隅田川で、私どもは毎年「江戸流しびな」を開催しております。

流しびなは、子どもの無病息災を紙や草木でつくった人形(ひとがた)に託し、川や海に流して祓い清めるいう、日本に古くから伝わる伝統行事です。その起源は平安時代の中期といわれておりますが、現在のように上巳(じょうし)の節句が3月3日とされたのは室町時代のことでした。

私たちはこの流しびなを東京都心を流れる隅田川で行うことで、子どもたちの健やかな成長と明るい未来をお祈りするとともに、古き良き季節の伝統行事を次世代に継承していきたいと考えております。そしてまた、東京に春の訪れを告げる風物詩として、都民の皆さまに楽しいひと時を過ごしていただきたいと思っているのです。

流しびなが繋げる親子の絆

私たち「江戸流し雛振興会」は、昭和60年(1985年)よりこの「江戸流しびな」を実施して参りました。3月3日の雛祭りの行事ですから年に一度だけの活動となりますが、今年で28回目の開催を無事終えることができました。

そもそもこの会は、節句人形の販売を生業とする私どもが、子どもたちの明るい将来を願う気持ちを何か形にしたいと考えて始めたものです。本来流しびなは、鳥取県などの地方では昔から行われていましたが、東京では見られない習わしでした。それを私どもが東京で行うことになったのですが、実は最初の一、二年は川ではなく、上野の不忍池で開催していたのです。しかしその当時の台東区の区長さんから、「ここよりも隅田川で行う方が良いのではないか。日本の有名な川をうまく活用してみてはどうか」というアドバイスをいただきまして、隅田川を利用させていただくことになったのです。

「江戸流しびな」は、毎年3月3日にいちばん近い日曜日に開催しておりますが、実際に流しびなを流される方、見学される方を合わせて3000人近い方が参加してくださいます。事前に公募した一般参加者1500名、当日参加の500名、それから船上より流し機を使用して流す、台東区立 石浜幼稚園の園児さんたちなど。それらの方たちが、浅草の今戸神社でお祓いを受けた紙の流しびなにお子さんのお名前と願いごとを書き、皆で一斉に川に流すのです。色鮮やかな雛人形が隅田川の水面に広がり、潮の満ち潮によってゆらゆらと流れ動く様子は、大変美しく、趣があります。この光景には、皆さんほんとうに感動なさるんですよ。

東京にお住まいの方だけでなく、地方からいらした観光客や外国人が参加されるということもたびたびあります。このような行事は外国では珍しいので、興味を持たれるようですね。雛祭りの説明をしてさしあげますと、「なるほど!」と感心されて、英語で願いごとを書かれる方もいらっしゃいます。

それから、28年も続けておりますと、「子どもの頃に親に連れてきてもらったのですが、今年は自分の子どもを連れてきました」なんておっしゃる方もおいでくださいます。父親との思い出を語ってくださったり、母への思いを短冊に書いてくださったり。そういう親と子の繋がりってすごく大切ですよね。自分が親にしてもらったことを、今度は自分が親になった時に子どもにしてあげる。その絆を結ぶ媒体のひとつとして隅田川の流しびながあるとしたら、それはとても嬉しいことです。私たちはこのような伝統文化から、人間本来の優しさや慈しみの心が生まれるのだと信じております。

隅田川で日本の文化に触れる

私はかねてより隅田川に大きな魅力を感じておりました。流しびなの活動や仕事とは関係なく、個人的に川のほとりを歩くこともたびたびあります。護岸が整備され、テラス化されてからは散策や憩いの場としても楽しめるようになりましたよね。隅田川沿いの水辺に親しみやすい環境ができたということは、地元の方にとっても観光で訪れる方にとっても大変喜ばしいことなのではないでしょうか。やはり隅田川は、東京を代表する川ですから。

そのような川で伝統行事を行わせていただけることに、私どもは大変誇りを感じております。地方ですとこのような行事は底の見えるきれいな川、いわゆる清流と呼ばれるところで行うのですが、東京にはそのような川はなかなかございませんね。しかし私どもは、人々が集い、船が行き交う隅田川に雛人形を流す、その神聖な行為こそが一服の清らかな流れを生むのだと思っているのです。

再来年にはこの「江戸流しびな」も30周年を迎えます。これまで続けてこられたのは、参加してくださる方々と地元台東区のご協力があってこそのこと。その感謝の気持ちを忘れず、節目の年にふさわしい催しとなるよう精一杯努めたいと思っております。

隅田川で日本の伝統行事に触れる。その感動的なひと時をぜひ皆さんも体験してみてください。

江戸流し雛振興会

伝統行事“流しびな”を継承することを目的に組織された会。古き良き日本の文化である雛祭りを東京の子どもたちに伝え、その本質にある「優しさ」や「慈しみの心」を通じて明るい未来を築いていきたいとの願いのもと、東京に「春」を呼ぶ風物詩として28年にわたって活動を続けている。

活動紹介

毎年3月3日の雛祭りにいちばん近い日曜日に、東京・隅田川(吾妻橋親水テラス周辺)にて「江戸 流しびな」を開催。毎年3000名を超える参加者が、それぞれの願いごとを紙の雛人形に託して隅田川へ流す。台東区長、浅草観光連盟会長をはじめ、浅草名物の振り袖さんによるハト型風船の放天なども同時開催される。