よくある質問(洪水浸水想定区域図)

想定最大規模降雨の洪水浸水想定区域図に関するQ&A集を掲載しています。
また、参考までに浸水予想区域図に関するQ&A集についても掲載いたします。浸水予想区域図Q&A集(PDF ○○○MB)

質問項目

1.洪水浸水想定区域図について

2.「想定し得る最大規模の降雨」について

3.シミュレーションについて

4.避難や対策について

5.ハザードマップについて

回答

1.洪水浸水想定区域図について

1.1.    浸水予想区域図とは? 浸水予想区域図の改定とは?

 水防法第14条第2項に基づき、洪水時の円滑かつ迅速な避難を確保し、又は浸水を防止することにより、水災による被害の軽減を図るため、想定し得る最大規模の降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域のことで、その区域を示したものが洪水浸水想定区域図です。
 洪水浸水想定区域図では、以下の[1]~[5]に示す図面を公表しています。なお、[1][2][3]の図面は水防法に基づき、[4][5]の図面は「洪水浸水想定区域図作成マニュアル」に基づき作成しています。

[1] 想定最大規模降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を示す「洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」
[2] 計画規模降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を示す「洪水浸水想定区域図(計画規模)」
[3] 河川氾濫区域内の浸水継続時間を示す「洪水浸水想定区域図(浸水継続時間)」
[4] 家屋の倒壊・流出をもたらすような氾濫流が発生することが想定される区域を示す「洪水浸水想定区域図 (家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流))」
[5] 家屋の倒壊・流出をもたらすような河岸侵食が発生することが想定される区域を示す「洪水浸水想定区域図(家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食))」

 令和3年の水防法改正により、これまで指定対象であった洪水予報河川及び水位周知河川に加え、その他の一級河川及び二級河川も洪水浸水想定区域の指定対象に追加されたことを受け、都が管理する全河川で15の洪水浸水想定区域図を公表しています。
 なお、水防法に基づき作成する洪水浸水想定区域図の対象は以下の表1のとおりです。

表1 洪水浸水想定区域図の作成対象
  作成対象
[1]想定最大規模 ・水防法に基づき指定した洪水予報河川及び水位周知河川
・その他の一級河川及び二級河川
[2]計画規模 ・水防法に基づき指定した洪水予報河川及び水位周知河川
[3]浸水継続時間 ・水防法に基づき指定した洪水予報河川及び水位周知河川
・その他の一級河川及び二級河川

1.2.   洪水予報河川や水位周知河川とは?

 洪水予報河川とは、河川水位の変動を予測し、河川が溢れる恐れのある場合にその情報を都民に提供する河川をいいます。また、水位周知河川とは、洪水予報河川以外の河川で、実況の水位が氾濫危険水位に達したことを都民に提供する河川をいいます。
 洪水予報河川、水位周知河川の指定状況は、東京都水防計画をご確認ください。
・東京都建設局 水防活動の支援・取組み
 https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/suibo/index.html

1.3.   洪水浸水想定区域図(想定最大規模)とは?

 想定し得る最大規模の降雨により河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域と浸水深を示したもので、水防法に基づき、東京都が指定した洪水予報河川及び水位周知河川、その他の一級・二級河川について、この洪水浸水想定区域図(想定最大規模)を作成しています。
 想定し得る最大規模の降雨の設定等については、「2.「想定し得る最大規模の降雨」について」で詳しく説明しています。

1.4.   洪水浸水想定区域図(計画規模)とは?

 水防法に基づき、東京都が指定した洪水予報河川及び水位周知河川について、洪水浸水想定区域図(計画規模)を作成しています。
東京都が管理する河川においては、都県を跨ぐような一部の河川を除き、東京の河川の将来の整備目標である時間 100mm(端数は四捨五入)、年超過確率は1/100程度の降雨規模を計画規模としています。
 なお、都県を跨ぐ「境川流域」では24時間総雨量:302mm、年超過確率は1/100程度、「鶴見川流域」では48時間総雨量:405mm、年超過確率は1/150程度の降雨規模としています。
 洪水浸水想定区域図(計画規模)は、企業等が洪水によるリスクを適切に把握し、発生確率に応じた適切な対応をするため、発生頻度の極めて小さい想定最大規模降雨とは別に、より発生頻度の高い外力による浸水想定区域図として作成し、公表するものです。

1.5.   洪水浸水想定区域図(浸水継続時間)とは? 浸水継続時間の考え方は?

浸水継続時間は、洪水時に避難が困難となる一定の浸水深を上回る時間の目安を示すものです。継続時間が長い地域では、洪水時に屋内安全確保(垂直避難)により身を守ることができたとしても、その後の長期間の浸水により生活に支障が出る恐れがあることから、立ち退き避難(水平避難)の要否判断に有用な情報となります。
  シミュレーションで得られた氾濫想定地点(10m×10mメッシュ)毎の浸水計算結果により、浸水深が0.5m以上継続する時間を算定して、継続時間別に色表示しています。
  算定においては、一旦水が引いて、0.5mを下回った後、再び増水して0.5mを上回った場合は、最初に0.5mを上回ってから最終的に0.5mを下回るまでの通算時間としています(下図1参照)。


図1 浸水継続時間
(「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4 版)」のP.29より抜粋)

1.6.   家屋倒壊等氾濫想定区域図(氾濫流)とは?

 一般的な木造2階建家屋を想定し、洪水時の氾濫流の流体力により、家屋が流失・倒壊する恐れがある範囲を示すものであり、洪水時における屋内安全確保(垂直避難)の適否の判断等に資する情報となります。
 一般的には、土堤が破堤した場合の氾濫流や、急流河川の湾曲部、掘込み河道沿川のような高速流れの氾濫流が想定されるエリアについては、「家屋倒壊等氾濫想定区域図(氾濫流)」として表示される可能性が大きくなります。「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4 版)」に準じて、氾濫流による家屋倒壊等氾濫想定区域については、設定した倒壊等限界地点の包絡線を図示している場合もあります(下図2参照)。
 検討した結果、対象となる区間において、家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)がない場合もあります。


図2 家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)の設定例
(「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4 版)」のP.33より抜粋)

1.7.   家屋倒壊等氾濫想定区域図(河岸侵食)とは?

 洪水の流れにより河岸が侵食される(削り取られる)おそれのある範囲を示したものです。河岸侵食が生じると、家屋の基礎を支える地盤が流出し、侵食範囲にある家屋については家屋本体の構造によらず倒壊・流出の危険が生じます。ここでは、出水時に生じ得る河岸侵食幅を算定し、倒壊の危険性のある家屋の範囲を河岸侵食による「家屋倒壊等氾濫想定区域図(河岸侵食)」として、示しております。

1.8.   洪水浸水想定区域図は浸水予想区域図とどこが違うのか?

 洪水浸水想定区域図は、水防法第14条の規定に基づき作成しているものです。
 これに対し、浸水予想区域図は、水害の危険性を認識していただくために、東京都の管理する全河川(島しょを除く)の流域を対象に、河川及び下水道による浸水をあわせて表示した東京都独自の取組になります。
 両者の違いを以下の表2に示します。
 

表2 洪水浸水想定区域図と浸水予想区域図の違い
  洪水浸水想定区域図 浸水予想区域図
表示内容 河川の氾濫による浸水(外水氾濫)が想定される区域及び浸水深 河川の氾濫(外水氾濫)及び下水道(雨水管)の溢水(内水氾濫)により浸水が予想される区域及び浸水深
根拠法令 水防法 なし
作成主体 国土交通大臣あるいは都道府県知事 都市型水害対策連絡会

 なお、国管理の荒川、江戸川や国直轄管理区間の多摩川、浅川、大栗川、中川、綾瀬川及び鶴見川(神奈川県側)の洪水浸水想定区域図は、国土交通省の各河川事務所が作成しています。これらの河川とそれぞれの洪水浸水想定区域図等に関する詳細は、以下の機関にお問い合わせください。
 また、都県境を流れる河川の神奈川県側及び埼玉県側(芝川・新芝川を含む)の洪水浸水想定区域図等は、各県にお問い合わせください。
※荒川について →国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所
※多摩川、浅川、大栗川、鶴見川(神奈川県側)について
 →国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所
※江戸川、中川・綾瀬川について
 →国土交通省 関東地方整備局 江戸川河川事務所

2.「想定し得る最大規模の降雨」について

2.1. 想定最大規模降雨は、何ミリの雨?

想定最大規模降雨の降雨量は表3のとおりです。

表3 想定最大規模降雨の降雨量
対象区域 想定最大規模降雨
都管理河川(下記流域を除く) 1時間153mm、総雨量690mm
黒目川、落合川、柳瀬川、空堀川
及び奈良橋川流域
1時間156mm、総雨量657mm
境川流域※1 1時間170mm、総雨量710mm 
鶴見川流域※2 1時間163mm、総雨量792mm
浅川圏域、大栗川及び三沢川流域 浅川圏域及び大栗川流域:
1時間153mm、総雨量690mm
三沢川流域:
1時間152mm(63分156㎜)、総雨量690mm
霞川及び多摩川上流圏域 霞川圏域:
1時間186 mm、総雨量670 mm
多摩川上流圏域:
1時間153 mm、総雨量690 mm
芝川流域 2日間総雨量839mm
八ツ瀬川流域 1時間147mm、総雨量836mm
 

 想定最大規模降雨については、流域一様に降雨を与えています(境川を除く)。

※1 境川の想定最大規模降雨は、過去の降雨の降り方等に配慮して同じ流域の中でも、雨の強度に強弱を加えて与えています。よって鶴瀬橋上流域の平均的な雨量値と河口部までを含めた境川流域全体の平均的な雨量値は異なります。 河口部までを含めた境川流域全体での平均的な総雨量は632mm となり神奈川県作成の想定図に記載される総雨量と同様です。 東京都が洪水浸水想定区域図を作成する際に鶴瀬橋上流域に降らせた雨と、神奈川県が作成した境川水系洪水浸水想定区域図(想定最大規模)を作成する際に鶴瀬橋上流域に降らせた雨は同じです。

※2 東京都が鶴見川の洪水浸水想定区域図を作成する際に東京都が管理する上流域に降らせた雨と、京浜河川事務所が作成した鶴見川水系洪水浸水想定区域図(想定最大規模)を作成する際に降らせた雨は同じです。

2.2.   想定最大規模降雨はどのように算定したのか?

 想定最大規模降雨は、表3のとおりです。(年超過確率は1/1000以下です。)
 この想定最大規模降雨の雨量は、国が定める基準(平成27年7月17日国土交通省告示)における関東地域の値を採用しています。
 想定最大規模降雨の設定方法は、「浸水想定(洪水、内水)の作成等のための想定最大外力の設定手法」に、地域別、面積別及び降雨継続時間別に最大降雨量が定められており、以下のように設定しています。
 
<都管理河川(下記流域を除く)>
 地域は関東を選択し、降雨継続時間については、河川計画の降雨継続時間や河川の洪水到達時間、下水道の流下時間を勘案して1、2、3、24時間を設定しています。
 その後、すべての河川流域「面積」毎に降雨継続時間1、2、3、24時間の時の雨量を算定し、河川ごとに大きな差がないことから、最大の雨量となる最小の流域面積を選定し、対応する最大降雨量を設定しています。
 さらに、東京気象台、八王子観測所のデータから求めた年超過確率1/1000となる雨量と比較し、より大きな値となる雨量を採用しています。
 
<境川流域>
 地域としては関東を選択し、降雨継続時間については、河川計画の降雨継続時間や河川の洪水到達時間を勘案して24時間を設定しています。
 その後、境川全流域の面積に対する降雨継続時間24の時の雨量を算定し、想定最大規模降雨としています。
 
<鶴見川流域>
 地域としては関東を選択し、降雨継続時間については、河川計画の降雨継続時間や河川の洪水到達時間を勘案して48時間を設定しています。
 その後、鶴見川全流域の面積に対する降雨継続時間48時間の雨量を算定し、想定最大規模降雨としています。
 
<浅川圏域及び大栗川流域>
 地域としては関東を選択し、降雨継続時間については、河川計画の降雨継続時間や河川の洪水到達時間、下水道の流下時間を勘案して1、2、3、24時間を設定しています。
 その後、全ての河川流域「面積」ごとに降雨継続時間1、2、3、24の時の雨量を算定し、河川ごとに大きな差がないことから、最大の雨量となる最小の流域面積を選定し、対応する最大降雨量を設定しています。
 さらに、東京気象台、八王子観測所のデータから求めた年超過確率1/1000となる雨量と比較し、より大きな値となる告示による雨量を採用しています。

<三沢川流域>
 地域としては関東を選択し、降雨継続時間については、神奈川県が公表している洪水浸水想定区域図を参考に、三沢川の洪水到達時間から63分間を設定するとともに、河川計画の降雨継続時間から24時間を設定しています。
 その後、三沢川全流域の面積に応じた最大降雨量を設定しています。
 さらに、浅川圏域及び大栗川流域と同様に、八王子観測所のデータから求めた年超過確率1/1000となる雨量と比較し、より大きな値となる告示による雨量を採用しています。
 
<霞川圏域>
 地域は関東を選択し、降雨継続時間については、河川計画の降雨継続時間から24時間を設定しています。
 その後、霞川圏域の面積に応じた最大降雨量を設定しています。
 さらに、八王子観測所のデータから求めた年超過確率1/1000となる雨量と比較し、より大きな値となる告示による雨量を採用しています。
 
<多摩川上流圏域>
 地域は関東を選択し、降雨継続時間については、河川計画の降雨継続時間や河川の洪水到達時間、下水道の流下時間を勘案して1、2、3、24時間を設定しています。
 その後、全ての河川流域「面積」毎に降雨継続時間1、2、3、24時間の時の雨量を算定し、河川ごとに大きな差がないことから、最大の雨量となる最小の流域面積を選定し、対応する最大降雨量を設定しています。
 さらに、東京気象台、八王子観測所のデータから年超過確率1/1000となる雨量と比較し、より大きな値となる告示による雨量を採用しています。
 
<八ツ瀬川流域>
 地域は中部を選択し、降雨継続時間については、河川計画の降雨継続時間から24時間を設定しています。
 その後、八ツ瀬川流域の面積に応じた最大降雨量を設定しています。
 さらに、父島観測所のデータから求めた年超過確率1/1000となる雨量と比較し、より大きな値となる告示による雨量を採用しています。

※年超過確率の雨量について
 年超過確率の雨量は、毎年1/Nの確率で○ミリ規模の雨が降ることを意味します。
例えば、1/1000雨量ということであれば、毎年1/1000の確率で○ミリ規模の雨が降ることを意味します。

2.3.   想定最大規模降雨はどのように算定したのか?

 実際の雨は、均一に降るのではなく、時間ごとに強くなったり弱くなったりしており、この様子を記録したものを降雨波形と呼んでいます。
 今回、降雨波形としては、都内の過去の実績降雨の内、雨量などが大きい降雨を抽出して氾濫解析を行い、浸水面積が最も広くなる波形を選定しています。
 降雨波形としては、表4 に示す過去の実績降雨を表3の雨量になるように引き延ばして作成しています。

表4 実績の降雨波形
対象区域 実績の降雨波形
都管理河川(下記流域を除く) 昭和56年台風24号※
黒目川、落合川、柳瀬川、空堀川
及び奈良橋川流域
平成28年8月台風9号
境川流域 平成25年9月台風19号
鶴見川流域 昭和33年狩野川台風
浅川圏域、大栗川及び三沢川流域 浅川圏域及び大栗川流域:
昭和56年台風24号※
三沢川流域:
平成元年8月1日の集中豪雨
霞川及び多摩川上流圏域 霞川圏域:
平成20年8月28日の集中豪雨
多摩川上流圏域:
昭和56年台風24号※
八ツ瀬川流域 平成9年11月洪水

※昭和56年台風24号における降雨の継続時間は19時間のため、24時間で690 mmとなるように引伸ばしているものの、降雨を与えている継続時間は19時間です。

2.4.    想定最大規模降雨はどのように算定したのか?

想定最大規模降雨については、現状の科学的知見や研究成果を踏まえ、利用可能な水理・水文観測、気象観測等の結果を用い、現時点において想定し得る最大規模の降雨として設定しています。想定最大規模降雨の発生頻度は極めて小さい事象でありますが、実際に発生する可能性はあります。

2.5.    想定最大規模降雨はどのように算定したのか?

気象庁の記録では、1時間最大雨量153mmは、1999年に千葉県香取地点や、1982年に長崎県長浦岳地点で記録されています。
日雨量は、2019 年に神奈川県箱根地点で922.5mm を記録しています。

2.6.    想定最大規模降雨はどのように算定したのか?

都内の雨量観測所における既往最大の雨は、時間雨量131mm(平成11年7月21日 練馬観測所)、日雨量607mm(令和元年10月12日台風19号 奥多摩観測所)です。
 表3で示す各流域における想定最大規模降雨は、既往最大の雨と比較しても、より大きな雨量となっています。

2.7.    想定最大規模降雨はどのように算定したのか?

昭和20年以降の水害のうち、東京都における家屋の浸水被害が最大となったのは、昭和33年の狩野川台風(総雨量444ミリ、時間最大76ミリ)で、浸水面積211km2、床上浸水家屋123,626棟、死者203人です。
 また、東京都における高潮被害として最大のものは、昭和24年のキティー台風(最大潮位AP+3.15m)で、浸水面積92 km2、床上浸水家屋73,750棟、死者122人です。
 その他の浸水実績については各区・市役所に問い合わせていただく他、昭和49年以降の水害の実績は、東京都建設局のホームページで調べることができます。
・東京都建設局 過去の水害記録~浸水実績図~
 https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/suishin/suigai_kiroku/kako.html

3.シミュレーションについて

3.1 シミュレーションの計算は、どのような内容なのか?

 洪水浸水想定区域図では、河川と代表的な下水道(雨水)幹線を一体で計算しています。河川の計算では、下水管(雨水管)からの流入量により河道を計算し、河道から溢れた水は地表面を10mメッシュに区切ったメッシュ上を流下する氾濫解析を行っています。
 これらは、実際の河川や下水管(雨水管※)の流れや地表面の浸水の状況を、より現実に近い形で再現するものであり、さらに氾濫解析を行うメッシュサイズも大きく縮小したため、より精度の高いシミュレーションモデルとなっています。
 
※「鶴見川流域」及び「境川流域」は、対象となる町田市及び稲城市内のほとんどが「単独公共下水道」であり、かつ『分流式下水道』で整備しているため、雨水幹線を対象としています。基本的に雨水は汚水管には流入しませんので、雨水管のみを対象としています。

3.2 表示する浸水深を10cmにしたのは何故か?

 浸水深が浅くても流速が大きい場合(1.5m/s以上)には避難(歩行)が困難となるという研究事例があり、シミュレーションにより地表面の流速を算定した結果、浸水深が10~20cmでは流速が1.5m/s以上の箇所がありましたが、浸水深10cm以下では流速は1.0m/s以下となりました。この結果と緊急車両の走行を注意する水深が10cm以下とされていること等から、表示する浸水深は10cm以上にしています。

3.3 表示しない浸水深10cm未満の浸水深は、どうすればわかるのか?

 浸水深の数値データは、区域図をより詳細に表示したPDFやCSVとして東京都オープンデータカタログサイトに公表しています。(浸水深・地盤高データ)
 または、浸水リスクに関する情報を、国土地理院等の電子地図上に表示し、地図や住所から簡易に調べることができるサービス(浸水リスク検索サービス)も建設局のホームページに公表しています。
 10cm未満の浸水が発生している箇所は、上記の数値データまたは浸水リスク検索サービスで確認することができます。
・東京都オープンデータカタログサイト
 https://catalog.data.metro.tokyo.lg.jp/dataset/t000014d0000000029
・浸水リスク検索サービス
 https://www.kensetsu2.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/chusho_seibi/risk/kensaku.html

3.4 想定最大規模降雨を降らせた範囲は?

 想定最大規模降雨は、流域全体に対して同時刻で発生するものとして、シミュレーションを実施しています。
 ただし、鶴見川流域は鶴見川の都県境上流域に雨を降らせています。また、境川流域は境川の鶴瀬橋上流域に雨を降らせています。

3.5 どのように10mメッシュの標高を決めたのか?

 国土地理院が公表している航空レーザ測量による5mメッシュの標高データを、10mメッシュごとに平均し、シミュレーションを実施しています。

3.6 下流端水位とは何?

 潮位の影響を受ける河川の計算を行う時には、最下流の条件を与えることが必要で、この条件のことを下流端の水位としています。
 この下流端の水位は、改定前の朔望平均満潮位A.P.+2.1m(中川、旧江戸川はAP+2.2.m)から「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4 版)」に従い、最高潮位を計画高潮位(A.P.+5.1m)に変更しています。
 なお、多摩川などの河川に合流する支川においては、合流点の特徴に応じ、合流点の水位として支川の水位または本川の計画高水位を設定しています。
 マニュアルに準じて、各河川の河口部や合流点においては、下流端(合流点)の水位のピークである計画高潮位や計画高水位等と洪水流量のピークが重なるように設定しています。

※計画高潮位とは?
 台風等の来襲による大気圧の低下に伴い、水面上昇が発生し、波浪等の影響も重なり水害の危険性にさらされるような地域に設定され、防潮堤や護岸の計画高さを決定する際に基準となる潮位のこと。東京都では、昭和34年9月に名古屋地方に最大の高潮被害をもたらした伊勢湾台風を契機として、同台風級の高潮(A.P.+5.1m)に対処できるように計画を改定し、防潮堤や護岸等を整備している。

※計画高水位とは?
 その水位以下で計画高水流量を流下させることができるように設定された水位のこと。

3.7 破堤点はどのように設定しているのか?

 河道の横断データおよび現地状況から築堤されている(背後地盤から堤防が盛土されている)地点を抽出し、これらのうち破堤開始水位(計画高水位または計画高潮位または湛水位)に達する地点を破堤地点として選定しています。
 破堤点が設定されている流域は「浅川圏域、大栗川及び三沢川流域」、「霞川及び多摩川上流圏域」、「秋川及び平井川流域」、「隅田川及び新河岸川流域」、「中川・綾瀬川圏域」の5流域です。

図3 河道断面のイメージ

※抽出した破堤地点は、「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4 版)」に準じて、水位が既設の護岸高(または防潮堤高)を超えていなくても、計画高水位(または計画高潮位または湛水位)を超えた場合は破堤点として破堤させることとしています。
※湛水位とは?
 中川、綾瀬川、新中川等においては、高潮時の場合、水門を閉鎖し、上流域の洪水を河道内に貯留する方法を取っている。この河道内貯留水の水位を湛水位という。

3.8 浸水が想定されない個所は、浸水しないと考えてよいのか?

 洪水浸水想定区域図は、想定し得る最大規模の降雨により、地形や河川などを考慮した浸水区域を想定しています。しかし、落ち葉による雨水ますの詰まり等により、シミュレーションでは反映しきれない浸水も実際には発生するため、注意が必要です。
 また、塀などの小規模な構造物も、シミュレーションには反映することができないため、低地や浸水実績のある箇所などでは、色が塗られていなくても注意が必要です。

3.9 流域の外に浸水が示されているのはなぜか?

 流域はある地域に降った雨水の流れを河川が受け入れる範囲として設定しています。しかしながら、河川から氾濫した洪水が流域を超えて、その外に広がることは実際の現象でも十分に考えられるため、区域図では、流域外についても浸水深を表示しています。
 流域外にも浸水が表示されている流域は、「神田川流域」、「城南地区河川流域」「石神井川及び白子川流域」、「霞川及び多摩川上流圏域」、「秋川及び平井川流域」、「八ツ瀬川流域」の6流域です。

3.10 浸水が深い場所はどの場所なのか?

 浸水予想区域図の凡例のとおり、3.0m以上5.0m未満(濃い青色)や5.0m以上(紫色)で色塗りされた箇所は、非常に浸水深が深いところとなります。
 なお、局所的に地盤高の低い箇所では浸水深が大きく表示されるような箇所もあります。

3.11 浸水深の目安は?

浸水深の目安は、
 浸水深0.5m:家屋の1階床高に相当する程度(床下浸水と床上浸水の境目)
 浸水深3.0m:家屋の2階床下高に相当する程度
 浸水深5.0m:家屋の2階が水没する程度です。

3.12 作成にあたり使用しているマニュアルや文献は何か?

準拠している主要なマニュアル等は以下の通りです。

  • 「洪水浸水想定区域図作成マニュアル(第4 版)」 平成27年7月 
    国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室
    国土技術政策総合研究所 河川研究部 水害研究室
  • 「内水浸水想定区域図作成マニュアル(案) 令和3年7月 国土交通省水管理・国土保全局下水道部
  • 「浸水想定(洪水、内水)の作成等のための想定最大外力の設定手法」 平成27年7月
    国土交通省 水管理・国土保全局
  • 「洪水浸水想定区域図データ電子化ガイドライン(第4版)」 令和5年2月
    国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室
  • 「中小河川洪水浸水想定区域図作成の手引き(第2 版)」 平成28年3月
    国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 水防企画室
  • 「水害ハザードマップ作成の手引き」 令和5年5月
    国土交通省水管理・国土保全局 河川環境課水防企画室   等

4.避難や対策について

4.1 大雨に対しどのように対処すれば良いの?

◆普段は
 →浸水想定区域図や洪水ハザードマップ等により、大雨時の避難場所・避難経路を確認する。
 →浸水が予想されている区域では、建築時に地下室の設置を避けたり、低い階に貴重品や思い出の品を置かないようにしたりするなど生活様式を工夫する。

◆大雨が降っているときは、
 →気象情報や河川の情報などの収集に努める
 →早めに避難準備を進め、地下室等には入らないようにする。
 といったことが重要です。

4.2 洪水浸水想定区域図をどのように活用すればよいのか?

 洪水浸水想定区域図は、非常に強い雨を与えて氾濫域や浸水深を再現したもので、発生確率は低いかもしれませんが、明日発生する可能性がないわけではありません。日頃より都が作成した洪水浸水想定区域図や区市町村が作成した洪水ハザードマップをご確認いただき、屋内で安全確保が取れるか?安全な避難路を確保して指示された避難所に避難ができるか?避難のイメージを高めていただき、いざというときに区市町村の避難情報を踏まえて適切に行動することが重要です。

4.3 浸水が始まったらどのようなことに気を付ければよいのか?

 自宅等の屋内で安全確保が取れない場合の被災もあれば、避難所に避難する途中で氾濫流に流されて被災される場合も考えられます。特に夜は、道路や小水路が増水してマンホールや水路の位置が分からなくなるなど、特に危険です。いざというときに市区の避難情報を踏まえて適切に行動することが重要です。

4.4 避難情報は出してくれるのか、どこで知ることができるのか?

避難勧告・避難指示等の避難情報は区市町村から発表されます。インターネット、テレビ、防災無線等の様々な媒体を通じてご確認ください。

4.5 降雨などの情報はどのように得られるの?

 河川の水位や気象情報などを下記のホームページでリアルタイムに提供しています。

・東京都水防災総合情報システム
 https://www.kasen-suibo.metro.tokyo.lg.jp/im/uryosuii/tsim0102g.html

・東京都水防チャンネル
 https://www.youtube.com/@TokyoSuibou

・東京アメッシュ
 https://tokyo-ame.jwa.or.jp/

・気象庁
 https://www.jma.go.jp/jma/index.html

5.ハザードマップについて

5.1. ハザードマップとは?

 東京都が作成した洪水浸水想定区域図や浸水予想区域図などを基に、避難路や避難場所等を併せて記載したものが「洪水ハザードマップ」です。洪水ハザードマップは、水防管理者である区市町村長が公表するもので、東京都内では令和6年2月現在、23区26市2町1村で作成・公表されています。

5.2. ハザードマップはいつ改定されるのか?

 ハザードマップは、水防法第15条に基づき、避難施設や避難場所、避難経路等に関する事項を定めるものとして、都が作成する洪水浸水想定区域図等をもとに区市町村が作成します。東京都は、洪水浸水想定区域図の浸水深等の情報を区市町村に提供しています。ハザードマップの更新に関する詳細は、各区市町村にお問い合わせください。

5.3. 水防法に基づく水害ハザードマップとは?

 水防法に基づく水害ハザードマップとは、水防法第14条、第14条の2、第14条の3に基づき指定した浸水想定区域(洪水浸水想定区域、雨水出水浸水想定区域、高潮浸水想定区域)が含まれるハザードマップを指します。なお、令和6年2月現在、東京都では、雨水出水浸水想定区域図は作成しておりません。